プラスとなる遺産は相続、借金だけ相続放棄する方法ってある?
「大切な父が亡くなった」。これは遅かれ早かれ誰もが経験することになる、私たちの人生の苦難と言えるでしょう。自分の父がたくさん遺産を残してくれたなら全く問題はありません。もちろん相続に関して兄弟ともめる事があったとしても、何かしか手元に入ってくる事になります。しかし逆のパターンもあります。借金を残して父が死ぬ、というケースです。もし仮に貴方が相続人だとすると、あなたは死んだ父の権利義務を一切引き継ぐ。つまり借金返済という義務も相続することになるのです。そこで抱く疑問、借金だけ相続放棄する方法ってあるのでしょうか?
結論から言いますと、ありません。では相続にはどんなパターンがあるのか一緒に見てみましょう。まず一つめが単独相続です。相続人が、死んだ父のすべての権利と義務を相続するケースです。これが相続の基本となる型です。たいていの場合、法律上の相続人がこのパターンで遺産を継続しています。
次に見るのが限定承認というケースです。これは、相続財産のプラスとマイナスを相殺し、余りが出たらその分だけを相続する、もし余りが出なかったら相続しないという相続方法になります。例えば、プラスの財産が3000万円、負債が1000万円の場合は相殺すると+2000万円ですから相続することになります。しかしプラスの財産が1000万円、負債が2000万円だと-1000万円となります。この場合は相続しないという選択になります。いずれにしろ負債が影響を及ぼしている事に変わりありません。
最後のケースとして挙げるのは、相続放棄です。借金を相続するのは避けたい、という場合にこの選択を採用することができます。法律が認めているわけですから、堂々と相続放棄して問題ありません。この相続放棄という制度があるからこそ、相続人を保護し債務を免れさせることができます。この相続制度を利用することが多いのは、農業や事業主の人が農地の分散や事業資産の分散を回避し、正当後継者に遺産を集中させる時です。他の推定相続人に相続放棄してもらうことによって、今の事業を継続させるというわけですね。亡き事業者の遺志を継ぎ、事業維持またはさらなる拡大を図るためにこの制度を利用するのは当然と言えば当然かもしれません。
このように相続には3パターンあります。しかし問題となる借金だけを相続放棄するという便利な制度はありません。その事を理解したうえで上手に事を進めましょう。亡き方の遺志を継ぐだけでなく、自分の今後の人生も大きく関わっていることですから。