借金の存在を知らなかったのですが、相続放棄は可能ですか?

このような状況を思い浮かべて下さい。Aさんのお父さんとお母さんは、Aさんが小さい頃に離婚しました。それっきりお父さんとは音信不通でした。Aさんが30歳を過ぎて暫くたった最近の話ですが、突然消費者金融業者から連絡がありました。「あなたの父親が私共の会社から借入金がありましたが、最近亡くなられましたね。相続人のあなたに返済を請求致します」、という旨の通告でした。Aさんにとっては寝耳に水、父親が亡くなったのも知りませんでしたし、借金の返済を自分に請求されるなんて夢にも思っていませんでした。しかも父親の死亡から3ヵ月が経過しています。さて、このようなケースでAさんは相続放棄が可能なのでしょうか?

結論から言いますと、このようなケースでは相続放棄が可能です。遺産相続とは、亡くなった方の遺産や権利、義務すべてを法定相続人が相続することです。この「義務」には借金の返済も含まれます。しかし相続は放棄することも可能です。相続を放棄することのできる期間は、被相続人の死亡及び自分が相続人である事を知った時から3ヵ月です。上記のAさんの場合、この「自分が相続人であることを知った時から3ヵ月」、というのがポイントです。Aさんの場合、父親の死を消費者金融業者の連絡まで知らず、その時初めて知ったわけです。ですからその電話があった時から3カ月以内に相続放棄の手続きをすれば問題ないわけです。

相続放棄をする場合、家庭裁判所へ手続きをすることになりますが、上記のAさんのケースでは通常の書類以外に3カ月以内に申述できなかった理由を書いた陳述書と、父親の借金を知った時期の証拠書類を提出する必要があります。この証拠書類とは例えば消費者金融業者からの手紙と消印などが挙げられます。そうすればたいていの場合、申述は認可されるはずです。

人の死とはなんとも虚しいものですが、ほとんど関係のなかった人の借金を背負うのも何ともバカらしいものです。こういったケースは時々起こりますので、相続の意味や相続放棄に関する知識をしっかりと頭に入れておきましょう。また、法律がいろいろと関係するものですから、自分では処理しきれない時は躊躇せず弁護士や司法書士に相談することにしましょう。

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